2011年5月28日土曜日

中国国民主導政治改革への第一歩?―無所属候補者、人民代表大会へ立候補表明―

中国で驚くべきことが起こりつつある。

新浪微博(中国版twitter)上で今年9月中旬に行われる区・県レベルの人民代表大会選挙への立候補を宣言する人が増え続けて、盛り上がりを見せているのだ。


5月27日までに18人の無所属候補者が立候補している。



より大きな地図で Yao Bo 姚博/Wu Danhong 吴丹红/Xu Chunliu 徐春柳 を表示
確かに中国の憲法上、満18歳以上の国民が直轄でない市、県や区の直接選挙に立候補することは可能である。ただ共産党員以外が立候補することは稀であり、そもそも直接選挙のルール自体を知らず、政治的な報復からかあまり興味を示す人が少なかった。


30代以下の新しい世代が台頭

何故このような自体が起こっているのか。

1つには30代以下の新しい世代が台頭してきたことが挙げられる。

よく耳にし感じることなのだが、改革開放前後以後の世代と上の世代は明らかに違う。

彼らは若い頃からインターネットを駆使し、世界の情報を入手しているし政治的にも89年の天安門事件を直接経験していないので、比較的自由に物事を考えることが出来る。また政治的・社会的な問題にも関心が強い。特に80年代~90年代の若者はこの傾向が顕著にあり、個人的には、最早中国のエリートも日本のエリートもこれらの問題に対する考え方に大差はなく、むしろあちらのほうが良く考えているように感じる。(もちろん直接の政府批判はできないが)


 ※中国互联网络发展状况统计报告2011から抜粋


■新浪微博の影響力
またその彼らが価値観を表現できる場として、筆者は新浪微博の重要性を挙げたいと思う。新浪微博はすでに14000万人のユーザーを抱えており、多数のフォローを獲得している人はその発言により人びとに一定程度の影響力を行使できるだけではなく、支持も獲得することができる。やはり公の場では政治的(社会的はOK)な話はまだ躊躇されることが多い中国において、自分の価値観を再認識させることが出来る場所の存在は大きいと思う。また確かに天安門事件などNGワードを含む文章は削除されるが、政府批判にならなければ政治・社会改革などの話題も可能であり、比較的議論されつつある。

■立候補者
今回の立候補者18名中5人が20代(大学生3人含)であり、一番若い候補者は20歳である。政治的恐怖心は比較的薄いであろう。彼らがどういう議論をするのかは興味深い。(勢いで手を挙げてしまった感もあると思うが)また共産党員二人が立候補していることもポイントである。確実に党組織との対立が起き、どのような展開になるか予測不可能にも関わらず、立候補をしたということはそこまで政治的な空間が生まれたということなのか。今後の展開が気になる。ただ多くの人からの応援メッセージと共に、当局からの圧力もあるようだ。暴力事件も複数起こっており、家族や親戚と自分は一切関係ないと宣言する候補者もいる。

確かにこのまま議論が進んでいけば9月までに多くの人びとが立候補するだろうし、国民主導の政治改革への第一歩となるだろう。ただし共産党はそこまで急激な変化を望んでいないし、遅かれ早かれどこかで当局の介入が入る気がする。いずれにせよ今後の動向に注目である